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2014/06/14 【青森】「政府のエネルギー基本計画は虚構のようなもの」 〜「原子力依存からの脱却と地域再生」伴英幸氏ほか

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 「原発事故が起こったら、地域社会は崩壊する。また、原発が安全審査に通らなかった場合は事業破綻につながり、やはり地域社会の崩壊になる」──。

 2014年6月14日、青森県青森市のリンクステーションホール青森で、人権擁護大会プレシンポジウム「原子力依存からの脱却と地域再生~核燃・原発廃止への道筋を探る」が行われた。原子力資料情報室共同代表の伴英幸氏による基調講演に続いて、伴氏と弘前大学名誉教授の神田健策氏(農業経済学)、東北大学教授の長谷川公一氏(社会学)が、原子力関連施設の集中する青森県のこれまでと、今後の原発・核燃料サイクルからの脱却の方策について論じた。

 伴氏は「六ヶ所村の財政は、市町村税の85.8%が固定資産税収入だ。そして、電源三法交付金で、1981年から2012年にかけて総額455億380万円が支払われた。村の税収は、ほとんど核燃によって成り立っている」と指摘した。

 原発から脱却後の地域再生の展望、再生可能エネルギーや廃炉ビジネスなどに関して、長谷川氏は「ドイツが脱原発に転換できた理由は、1990年代から再生可能エネルギーに力を入れてきたことだ」とし、買取制度を整備する必要性を語った。神田氏は「人口60万人の米国バーモント州が地産地消に力を入れ、ヤンキー原発を廃炉にした」と報告した。

  • 記事目次
  • 規制委の新委員は「原子力ムラ社会」の一員
  • 固定資産税85.8%、電源三法交付金455億380万円
  • 脱原発の前に立ちはだかる政策変更リスク
  • 再処理工場での過酷事故をリアルに想定せよ
  • 原子力設備に「理解」がある青森県
  • 東通村は歳入の67.8%、六ヶ所村は54.6%が交付金
  • 六ヶ所村は日本原燃の経営破綻を恐れる
  • 非核保有国で唯一プルトニウム抽出が認められている日本
  • 脱核燃には軟着陸が必要
  • 地場産業の開発と促進が「脱却」のカギ

■Ustream録画
・1/2(13:50~ 2時間59分)

10分~ 開会/12分~ 源新氏あいさつ/16分~ 伴氏基調講演/42分~ パネルディスカッション/2時間45分~ 質疑応答

・2/2(16:51~ 14分間)

  • 主催あいさつ 源新明氏(青森県弁護士会会長)
  • 基調講演 伴英幸氏(原子力資料情報室共同代表)
  • パネルディスカッション
    パネリスト 神田健策氏(弘前大学名誉教授、農業経済学)/伴英幸氏/長谷川公一氏(東北大学教授、社会学)
    コーディネーター 浅石紘爾氏(青森県弁護士会)
    質疑応答
  • 日時 2014年6月14日(土)14:00~17:00
  • 場所 リンクステーションホール青森(青森市)
  • 主催 青森県弁護士会詳細、PDF)

 冒頭、青森弁護士会会長の源新明氏が、「10月に、函館で開催される人権擁護大会のテーマのひとつは『脱原発。放射能の汚染のない未来をどう切り開くか』である。どうすれば、原子力に頼らない地域社会を実現できるか。皆さんで、自立した青森県を考えていきたい」と挨拶した。

規制委の新委員は「原子力ムラ社会」の一員

 続いて、伴英幸氏の基調講演に移った。はじめに伴氏は、原子力規制委員会の新委員に元日本原子力学会会長の田中知東京大学教授が決定したことについて、次のような所感を述べた。

 「田中氏とは何度か会合で同席したことがあるが、彼は根っからの原発推進派だ。記者会見で『規制委員会は社会から孤立しないように…』と話したらしいが、彼の言う『社会』は『原子力ムラ社会』のこと。電力業界の意向に添うような人事だと思う」。

 また、大飯原発3・4号機差し止め請求訴訟での勝訴(5月21日)に触れて、「原子力学会は『判決はゼロリスクを求めるもので、非科学的だ』という批判コメントを出した。これまで『重大事故は絶対に起きない』と主張してきた人たちが、いったん事故が起こると『ゼロリスクはありえない』と態度を変える。そういう姿勢で安全審査が進められると、今後も事故のリスクは高まるだろう」と語った。

 伴氏は「福島を見てわかるように、事故が起こったら地域社会は崩壊する。また、原発が安全審査に通らなかった場合も、事業破綻のリスクにつながり、やはり地域社会の崩壊になる」とし、福島県双葉町を例に挙げた。「双葉町は最初は地域交付税で潤ったが、2000年には財政破綻状況に陥った。また、産業構造が原発依存になり、第1次産業の衰退にも拍車がかかった」。

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固定資産税85.8%、電源三法交付金455億380万円

 続けて、運輸業と鉱業、核燃事業にあたる製造業が飛び抜けている六ヶ所村の産業生産指数を示した上で、「六ヶ所村の財政は、市町村税の85.8%が固定資産税収入だ。そして、電源三法交付金で、1981年から2012年にかけて総額455億380万円が支払われた。村の税収は、ほとんど核燃によって成り立っている」と指摘した。

 伴氏は、原子力市民委員会の提言として、「原子力廃止措置機関の設置。電源三法交付金の廃止。脱原子力エネルギー転換税法を制定して、自立的産業、人材育成、地域再生の仕組み作りを促進するために活用する。核燃料の再処理からの即時撤退。保管燃料の核燃料税の継続。保管期間を決めること」などを並べ上げた。

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 また、「新潟県の柏崎刈羽原発は、2007年の中越沖地震で運転を停止し、その後、1号機だけが運転再開したが(現在は停止中)、2~4号機はずっと停止状態だ。2009年、新潟自治研究センターが『30年後の柏崎を考える』という報告書を作成し、10の提言をしている」と述べ、情報を住民と共有し議論の場を作る、財政削減と再建計画を策定する、地域資源を洗い直す、街の将来像を描くなどの内容を紹介。伴氏は「3.11以前に作られた提言が、現在も脱原発依存のヒントになる」と話して、講演を終えた。

脱原発の前に立ちはだかる政策変更リスク

 続いてシンポジウムに移り、伴氏と、神田健策氏、長谷川公一氏が壇上に並んだ。コーディネーターは青森県弁護士会の浅石紘爾氏が務めた。

 浅石氏が「日弁連は、核燃サイクル停止、原発の再稼働阻止、新設増設阻止、すみやかに廃炉などを決議した。しかし、政策変更リスクが脱原発のネックになっている」と述べ、4月に発表された政府のエネルギー基本計画について、それぞれのパネリストにコメントを求めた。

 伴氏は「今回のエネルギー基本計画は、国民の意見を吸い上げることなしに作られた。福島原発事故の被災者に寄り添う、と政府は言うが、帰還政策や健康被害への対応などをみると、何もしていない。原子力を『ベースロード電源』に位置づけたというが、原発を動かすかどうかは規制委員会の判断待ちなので、具体的には何も書けない。それで、核燃料サイクルに重きをおいた基本計画にしている。だが、再処理や高速増殖炉には実態が伴っていないので、これは虚構のような計画だ」と断じた。

 長谷川氏も伴氏の意見に同意し、「長年、原子力政策を推進してきた自民党や経産省が、事故を十分に反省していない。事故の風化などと言うが、その意味は事故を忘れさせることだ。早期帰還への圧力があり、それが再稼働への圧力につながる」と述べた。

再処理工場での過酷事故をリアルに想定せよ

 その上で、「福島事故では大変な被害が出たが、それでも最悪の事態はまぬがれた。事故当時に米国原子力規制委員会の委員長だったグレゴリー・ヤツコ氏は、4号機の貯蔵プールの水は沸騰してなくなっていると推測していた。だが、たまたま4つの偶然が重なり、奇跡的に東日本は救われた。また、女川原発も危機一髪だったのだ。では、再処理工場で過酷事故が起きたらどうなるのか。リアリティを持って受け止めなければいけない」と力を込めた。

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 神田氏は「農業問題の研究者の立場から、核燃料サイクル施設の問題に関わってきた。何度も討論会を開き、さまざまな危険性を指摘しても、推進側の人たちは『そんなことはありえない』と答えていた。チェルノブイリ原発事故の時には『日本の原発はチェルノブイリと型が違うから、事故は起こらない』と断言した。こういう姿勢が、結果的に今回のような問題を招いた」と話し、次のように続けた。

 「福島原発事故の全体像が明らかになっていない。それを、いまだに国民に知らせていないのが、一番の問題。今年中に秘密保護法が施行されると、このような事故の実態は、ますます国民に知らされないようになる。これは恐ろしいことだ」。

原子力設備に「理解」がある青森県

 続いて長谷川氏が、青森県に原発施設が集中した経緯について語った。「1970年代後半から使用済み核燃料の問題が表面化し、まず、九州電力が離島案を立てた。しかし、管理、保守、人員の面で課題も多く、長崎県平戸島での計画は1982年に頓挫。次に、東北電力が模索して、原子力船むつの寄港地の、むつ市関根浜が候補に挙った」。

 「その後、原発用地だった東通と六ヶ所村も候補に浮上。電事連は東通で進めていたが、当時の北村正哉青森県知事らが、再処理工場を含めて、六ヶ所村を提案した。だから、国から押し付けられたのではなく、むつ小川原開発計画の破綻を抱えた青森県と、国、事業者の思惑が一致した、と言う方が正しい。そして、現地調査も行わず、正式要請からわずか8ヵ月後に調印した」。

 浅石氏が「六ヶ所村ひとつに4つの施設(ウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設センター、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、MOX燃料工場)を集中して作るという、国や電力会社の発想はどこから出てくるのか」と訊ねると、長谷川氏は「当時の経団連会長が『青森県は原子力設備に理解がある』と発言した。それが、すべてではないか」と答えた。

 神田氏は「2010年の調査で、青森県の県民所得は38位。就業者1人当たりの総生産額は47位で最下位。有効求人倍率0.8台で、沖縄と青森が最下位を競う。完全失業率は全国2位。青森県は、地方交付税交付金と国庫支出金に依存した自治体なのだ」と指摘した。

東通村は歳入の67.8%、六ヶ所村は54.6%が交付金

 続けて神田氏は、「東通村は、電源三法交付金が歳入の67.8%。刈羽村の次に多い。六ヶ所村は54.6%。青森県が1970年から2006年度までに、むつ小川原開発に要した経費は3322億円。その結果、第1次産業の割合が、誘致前の21.8%から4.4%に落ちた。第2次産業は横ばいで、製造業は停滞し、建設業だけが残った」と説明した。

 「青森県の自主財源は歳入の11~15%だけ。対して、税増収対策では核燃料物質取扱税を徴収、県税の10数%を占める。今後、施設が稼働すれば、税収が増えて核燃城下町になる」。

 さらに、1万人訴訟原告団核燃料サイクル施設資料を参考に、「原発電源三法交付金は、2012年度の合計2206億円。イベント開催などの風評被害対策に約67億円。また、表に出ていない金が475億円もあり、合わせると約3000億円だ。しかし、むつ小川原開発経費で相殺してしまっている」と、青森県の原子力マネーの実態を明かした。

 そして、「民主党政権の2012年9月、核燃サイクル中止を決めようとすると、六ヶ所村村議会が『止めるなら、今後は廃棄物を受け付けない。また、今ある廃棄物を各原発に返す』と脅して、計画を存続させた」と述べた。

六ヶ所村は日本原燃の経営破綻を恐れる

 浅石氏は「3.11以降、自治体への寄付金の削減や、交付金の減額が言われている。どういう影響が出てくるのか」と質問。長谷川氏は「今、六ヶ所再処理工場は建設が止まっていて、村は廃れ、住民は工事再開を願う。一番、心配されているのは、日本原燃が経営破綻することだ。(日本原燃の大株主である)東電は原発17基を所有。原発の総発電力の36%、使用済み燃料は38%を供給しているが、現状、東電は国が支えている状態。成り行き次第では、日本原燃も芋づる式に破綻する」。

 伴氏は「エネルギー基本計画に、電力システム改革が書いてある。2016年から電力自由化になり、総括原価方式もなくなる。電力会社が原発立地自治体に寄付もできなくなる。安倍首相は、核サミットで『余剰プルトニウムは持たない』と公約した。裏を返すと、プルトニウムを保有することに、世界の目が厳しくなったからだ」と述べた。

 さらに、「そうなると、再処理工場も生産に規制がかかる。青森県が、まだ交付金に依存するなら、高レベル廃棄物処分場も誘致しようという話になるのではないか」と眉をひそめた。

非核保有国で唯一プルトニウム抽出が認められている日本

 「日本は非核保有国の中で唯一、プルトニウム抽出が認められている。2018年8月、アメリカとのプルトニウム生産の協定期限が切れる。今年は韓米原子力協定が切れるが、韓国はプルトニウム再処理を要求するかもしれない。ただし、アメリカは北朝鮮を刺激しないよう、慎重な立場だ」。

 このように語る長谷川氏は、「東芝とウェスティングハウス、日立とGE、三菱重工と仏アレバが、原子力の世界3大メジャー。脱原発になると彼らは事業から撤退し、中国メーカーだけが残るだろう。アメリカは、それも避けたい。政府はそんな国際政治のせめぎ合いの中でも、原発を早く動かしたいと思っている」と、ひと筋縄ではいかない外交上の駆け引きも明かした。

脱核燃には軟着陸が必要

 核燃料サイクルを止めるにあたっての、救済と補償の具体策に関しては、伴氏が「超党派議員による原発ゼロの会が、発電用原子炉の廃止の促進に関する法律案骨子を作った。廃止対象原子炉の周辺地域の振興に関する特別措置法案の立案。それは、経済的影響の緩和と、振興策で補助する内容だ。国会内にエネルギー関係を議論する場がないため、国会エネルギー調査会準備会を発足、40回ほど議論を重ねている」と話した。

 「廃炉の予算は廃炉費用積立金があるが、その制度は、40年を越えた原発に対する費用に限っている。ゆえに、40年より前に廃炉にする場合の措置は検討中だ。地元については、地域振興の基本方針を決めて、交付金、事業費を補助する」。
 
 長谷川氏は、ドイツのある村の成功例を挙げた。「1985年5月、再処理工場建設を中止した。2002年、その村にはBMW社やキャタピラー社など、たくさんの工場が誘致がされていた。つまり、社会的合意ができるかどうかがポイント。廃止が決まったら、地域を良くするために住民がよく話し合い、建設的に前に進むことが重要だ」。

 神田氏も「廃止するには、軟着陸が必要。住民の自主的エネルギーを引き出す方策がないと失敗する」と述べ、伴氏は「原発も核燃も、なくてもやれるという自覚をもつことだ」と語った。

地場産業の開発と促進が「脱却」のカギ

 休憩後、質疑応答に移った。会場からは、再生可能エネルギーに転換した場合の障害や、六ヶ所村が原発廃棄物の捨て場になる可能性を懸念する声が寄せられた。再生可能エネルギーの最善の方策は、という質問には、「電力会社の力が強い。系統へのアクセスが問題。発送電分離を徹底すること。北海道と東北の間は60万キロワット、東電と中部電力の間は、100万キロワットしか送電できない。旧態依然な縄張り意識をなくすことだ」と答えた。

 各パネリストからは、「こういう議論は今までなかった。画期的だ」「今までは、再処理工場などがいかに危険かと、マイナス面を訴えることばかりだった」「最終的に、青森県民が拒否権と再出発のカギを握っている」などの所感が述べられた。

 最後に神田氏が「安倍政権は、大手企業が儲かることしか考えていない。地域の活性化は、地場産業の開発と促進だ。風力発電も住民でやれる」と鼓舞して終会した。【IWJテキストスタッフ・関根/奥松】 

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